
夢を見た。
今日はそんな、夢の話をしよう。
花は、彼女を選んだ。
名もない庭に、一人の少女が立っていた。
風が吹くたび、髪は花びらのように揺れ、
足元には誰も植えた覚えのない草花が芽吹く。
彼女は一歩も動かない。
それでも季節だけが、彼女の周りを巡っていた。
ある日、一人の旅人が尋ねる。
霧が晴れぬ谷の奥。
石像だけが並ぶ古い庭園で、一人の旅人は少女を見つけた。
花は枯れている。
それなのに、少女の足元だけには白い花が咲いていた。
旅人は剣を下ろし、静かに尋ねる。
「……お前は、生者か。」
少女は花びらに触れながら答えた。
「私にも分かりません。」
風が吹く。
花びらは舞うことなく、その場で静止していた。
旅人は眉をひそめる。
「なら、なぜここにいる。」
少女は少しだけ笑う。
「待っています。」
「誰を。」
長い沈黙。
少女は旅人を見つめる。
「私を描いた人を。」
その言葉を最後に、庭園は再び霧に包まれた。
旅人が目を開けると、少女の姿は消えていた。
ただ一輪の白い花だけが、石畳に残されていた。
果たして・・。