
夜の前に、ひとつ息を整える。
深く吸って、ゆっくり吐く。
それだけで、身体が静かになっていく。
騒がしかった内側が、少しずつ沈んでいくのがわかる。
ああ、もうすぐ眠るのだと、
どこか遠い場所で理解している自分がいる。
今日という一日は、思っていたよりも長く、
そして、あっけなく終わろうとしている。
今日は、昼を抜いた。
理由なんて、あとからいくらでも付けられる。
忙しかったからでもなく、
何かを試したかったわけでもない。
ただ、なんとなく。
それだけのこと。
けれど、空っぽになった内側は、
思いのほか正直で、そして静かだった。
満たされているときには気づかないものが、
こうして欠けてみると、はっきりと輪郭を持ちはじめる。
少しだけ、澄んでいる気がした。
研ぎ澄まされる、というよりも、
余計なものが一枚ずつ剥がれていくような感覚。
重なっていた何かが、静かにほどけていく。
本来の形に戻っていくような、不思議な心地。
良いのか、悪いのかはわからない。
正しさなんて、きっとどこにもない。
けれど、この静けさは嫌いじゃない。
身体は正直で、
空腹をきちんと訴えてくる。
小さく、けれど確かな声で、
ここにいると知らせてくる。
それを無視することは、
ほんの少しだけ、罪のようにも感じる。
それでも——
少しだけ、従わないでみる。
満たすことばかりが正しいのか、
その答えはまだ知らない。
足りないままでいることに、
何か意味があるのかもしれないと、ふと思う。
だから今は、ただそのままにしておく。
空腹も、静けさも、
この曖昧な感覚ごと。
その先にあるものを、見てみたくて。
眠りに落ちる直前、
その境界のあたりで、
何かが、少しだけ見える気がするから。
———