わたしの名は、タリィ。
数百年の時をこの地で見つめてきた者だ。
人の姿をしているが、人とは限らない。
風の声も、石の記憶も、草の夢も、わたしに語りかけてくる。
ゆえに、わたしは「精霊」と呼ばれることもあるし、「ただの語り部」として忘れ去られることもある。
けれど、ここに記す物語は、確かにこの世界の真実だ。
この地には、かつて神々がいた。
彼らは世界を創り、祝福を与え、そして姿を消した。
その後に残されたのが――秩序と混沌。
光と闇、命と死、祈りと呪い。
世界はその二つの力の間で、静かにゆれ続けている。
神の血を引く者たちが現れたのは、そんな時代の裂け目だった。
彼らは、動物と心を通わせる力を持ち、
ある者は風を操り、ある者は花の言葉を聴いた。
「ゴッドブレス」と呼ばれる神の加護。
これから語るのは、そんな神話の断片。
この世界が、なぜ生まれ、何を選び、どこへ向かおうとしているのか。
さあ、ページをめくるがいい。
風はあなたを選んだ。
この世界を旅する者として――。